HTC VIVE、VIVEProのフリーゲームを紹介するコーナー、2018年最後のVRゲームプレイ連載となります。今年も様々なフリーゲームと出会いました。夏や冬に感想を頂く機会もあり、大変嬉しい1年でした。来年も頑張ろうと思います。
今月もかなり面白い作品がラインナップしています。良い月と言えるでしょう。
第1位 アカデミー賞監督!独りの老人と少女の物語
Google Spotlight Stories: Age of Sail
リリース日:2018年11月14日
体験時間:15分程度
プレイスケール:着席・立位・ルームスケール
おなじみスポットライトシリーズの最新作です。今回はアカデミー賞受賞経験のあるジョーン・カースが監督を務めています。舞台は1900年の北大西洋。
元は仲間3人で楽しく航海をしていた老人ウィリアム・アヴェリーが一人の少女と出会う物語。ウィリアムは仲間とも離れ、ゆくあてもなく大海原に投げ出されています。
そんなところに、大型の船が到来。甲板から一人の女性が投げ落とされてしまいます。
偶然目撃したウィリアムはその少女を助けることに。ギリギリの所で引き上げることに成功しました。
助けた少女ララは、行かなければならないところがある、連れてってほしいとウィリアムに頼み込みますが、大海原で一人ぼっちになり、食料もなく、意気消沈しているウィリアムには声が届きません。小さな船で言い争いをはじめてしまいます。
そんな所にスコールを呼び寄せる雨雲が迫ります。ララは再度『あなたはもう一人じゃない』と自分がいることを伝え、船を動かすよう説得します。
ララに心動かされたウィリアム。大急ぎで荒らしスコールを切り抜けようと帆を全開にします。かつての陽気な姿が戻ってきました。
しかし大嵐による波で一人海に投げ出されてしまいます。「気にせず進め!」とララに叫びますが、ララは船を操縦して戻ってきてしまいます。
あと一歩ということろで船が壊れてしまい、二人とも海に投げ出されます。
ウィリアムは糸が絡まり水中の中へ。ララは必死に助けようとしますが息が続きません。
間一髪のところで自力で脱出したウィリアム。二人の無事を確認しあったところで、偶然にも海軍の船に発見されます。二人は保護され、海軍の船で語り合います。終わり。
全体的に非常によくできたお話ですが、プレイヤーにトコトン配慮した映像表現に大変感動しました。まず、船の上なのに酔わない。通常、船のVRというものは酔って普通なのですが、これにはそれがない。不思議な感覚です。
場面転換で訪れる夜の暗闇のシーンも非常に美しい。トゥーン表現だからこそできる”夜”の表現は一般的な3dグラフィックより綺麗にすら感じます。
一番驚いたのが水中の表現。後半のシーンでカメラも水中に潜るのですが、音と合わさって本当に水中にいるような不思議な感覚に陥ります。3DVRにおける水中表現はかなり難しいのですが、この作品の水中は凄い。決してリアルな水中というわけではないのですが、なぜか現実感を感じる。
ストーリー、演出、技術全てにおいて完璧と言える2018年末に相応しい作品でした。『VRってどんな感じ?』と言われたら、とりあえずこれをVIVEPROで見てもらいたい。そんな感想を抱く作品です。
第2位 絵本のようなモノクロ世界に取り込まれるVR
A Show of Kindness
リリース日:2018年11月16日
体験時間:15分程度
プレイスケール:着席・立位・ルームスケール
Tilt Brushで描かれたモノクロの世界を旅するアドベンチャーゲーム。なにもない真っ白な空間に一人の寂しそうな少女が描かれるところからお話はスタートします。
モノクロの世界は徐々に広がってゆき、あっという間にサーカス会場の入り口ができあがりました。観客もおり、いつの間にかプレイヤーも建物の奥へ進むことができるようになります。
奥から聞こえる陽気な音を頼りに暗がりの道を進むと、中には団長と思わしきヒゲのおじさんが佇んでいます。ここで一気に世界が明るくなり、サーカスの全容が明らかになります。
炎の剣を飲む人や雪を降らせる人など大勢の団員が観客を喜ばせています。
更に奥に進むと急に現実的な空間に。建物のてっぺんらしき所にたどり着きます。不安定な足場を辿っていくと、行き止まりに。下部の住宅を覗き込むと…。そこにはベットで楽しそうに笑っている少女と絵本を読み聞かせているおじさんの姿が。
どうやら今までの体験はおじさん(団長)が寂しそうな少女に語っていた絵本のお話を追体験していたようです。ということろでエンドロールが上空に流れて終わりました。
全体的にモノクロベースに世界が表現されており、動く部分などにのみ色が使われています。基本的に世界は静止しており、独特の世界観を演出しています。
全てTilt Brushで描かれているというのも大変見事。手書きの暖かさが伝わる良い作品でした。
第3位 色彩をチェックできる!カラーバランス体験
Experience: Colorblindness
リリース日:2018年11月28日
体験時間:20分程度
プレイスケール:立位・ルームスケール
色覚異常(いわゆる、しきもう)の人は世界がどのように見えているのかを確認することができるシミュレーターです。非常に出来が良く、RGB全てのパターンで色が欠けている世界を強度調整付きで見ることが出来ます。
フルツアーで20分程度、リアルな色と色覚フィルターをかけた上での色をリアルタイムで見比べることができます。美術館の芸術作品なども確認可能。更にレモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツを色覚異常フィルターがかかった状態で取り分けるミニゲームなどもできます。
自分の色覚状態を判別するテストもプレイでき、100色以上の色を並べ替えるテストや点に隠れた数字を見分けるテストなどを受けることができます。普通に大学の講義で使ってほしいレベルの作品です。
ランク外の惜しいゲーム
Short Circuit VR
リリース日:2018年11月20日
体験時間:30分以上
プレイスケール:着席・立位・ルームスケール
VR内で電子工作のシミュレーションができるスグレモノ。回路図に表記されている形を元に様々なパーツを呼び出すことができます。かなりの数の部品を収録しており、テストプレイの精度も非常に高い。
1.5v乾電池や9V乾電池など細かにユニバーサル基板に配線することも可能。リアリティが半端ないです。
筆者は電子工作の知識が少ないため全力で遊ぶことはできませんでしたが、間違った配線をするとちゃんとエラーもでるのでこれから勉強する人には役に立つかもしれません。
Galaxity Beta
リリース日:2018年11月8日
体験時間:15分以上
プレイスケール:着席・立位・ルームスケール
トゥーン調にデフォルメされた可愛いキャラクターになりきってオンラインプレイヤーと交流ができるマルチ専用VRゲーム。開始時に自由に容姿を変更できます。
筆者がプレイした時も何人かログインされており、ジェスチャーで交流したりできました。ボイスも使えるようです。移動がスライド式なので酔いに注意です。
今後のアップデートで遊べる施設やシステムが追加される予定のようです。
Boise Historic Natatorium
リリース日:2018年11月27日
体験時間:20分程度
プレイスケール:着席・立位・ルームスケール
かつて存在していた、アイダホ州のボイシナタリウムとホワイトシティ遊園地を再現したVRシミュレーター。フルツアー20分で過去の施設が解説付きで楽しめます。
クオリティはそれなりですが歴史を学ぶ面では面白い作品です。ただ眺めるシーンも多いですが、実際にトロッコに乗車できたり、ジェットコースターに乗って体験したりするシーンもあります。
他にも、チャップリンの作品が上映されているシアターもあったりと意外にボリュームのある作品です。
RideOp – VR Thrill Ride Experience
リリース日:2018年11月30日
体験時間:15分程度
プレイスケール:着席・立位
3種類の遊園地アトラクションを体験できるシミュレーターです。絶叫系、高所系のアトラクションが楽しめます。クオリティは並程度ですが、高さが実感できるのでちょっと怖さを感じます。(筆者は高所恐怖症)
また、過去最大レベルのゲロ酔いゲームとして認定できるレベルのフリゲーでもあります。ここまで酔う人のことを考えてない清々しいゲームは久々に体験しました。
VR酔いを体験したい(体験したことがない)人にはぜひやってもらいたいゲームです。笑
来年もお楽しみに!
12月のフリゲーは、年内ラストに相応しい良作が数点ありました。数カ月ぶりに没頭感を感じたような気がします。皆さんの今年一年間で面白かったゲームも教えていただきたいです。コメントお待ちしております。
来年もよろしくお願いいたします…!