徳島県の教育現場に約16000台配布されたCHUWIのタブレットPCである「UBook」の実機レビューとなります。夏場の故障率が異常に高いとニュースに取り上げられて話題になっていますが、どのような構造になっているのでしょうか。
ザックリとした特徴など
まずはUbookの概要を確認していきましょう。この機種は後継機としてUBOOK XやUBOOK Proなどが存在しますが、今回問題になっているの初代UBOOKとなります。発売は2019年末頃で、当時Amazonで手に入れることができました。価格は約32000円とかなりリーズナブル。
OSはWindows10で、CPUはCeleron N4100を搭載しGPUは一昔前の内蔵タイプです。一方で8GBのメモリと256GBのストレージ、11.6インチのフルHDタッチ対応ディスプレイという点では、当時の低価格PCとしてはかなり充実しています。
しかし教育向けとしては不十分な側面もあるように感じます。という訳でこのデバイスを詳細に検証していきましょう。なお今回のレビューは少し厳しめになるかもしれません。その点ご了承ください。
見た目とサイズ感
では外観を詳しく観察していきましょう。UBOOKはタブレット型のデバイスで、画面一体型のPCのような外観をしています。入力端子などはすべてディスプレイの側面に配置されています。
本体の下部には収納式のスタンドが取り付けられており、カバーなしでも自立させることができます。ただしエッジの処理がやや甘く、手や机などを傷つけそうで少し危険です。
外見には傷や汚れが散見されますが、これはリサイクルショップで中古購入したためであり、前の所有者の使用状況を引き継いでいるものです。ほぼジャンクみたいな値段で購入した覚えがあります。
サイズ感については、縦が約29cm、横が約17.5cm、厚みが約9mmとなっています。11.6インチのタブレットとしてはかなり大きいです。
比較のために自身の13.3インチのノートPCとも比較しましたがそれほど大きさに差は感じませんでした。重量は実測で約770gありやや重たいですが、Windowsタブレットとしては許容範囲内だと言えるでしょう。
画面とキーボード
ディスプレイについてですが、ベゼルが非常に太く一昔前のデジタルフォトフレームのような外観です。Windowsボタンが付いているため完全に無駄なベゼルとは言えませんが、それでもやや過剰な厚さです。このため横幅が29cmにもなっています。
画質に関してはフルHDなので十分に綺麗ですが、色味はやや青みが強い印象です。IPSパネルなので視野角も広く良好です。
タッチ操作に関しては特に問題はなくズレも感じませんが、反応がやや鈍いように感じます。細かい操作が難しいかもしれません。
キーボードに関してはマグネット式の外付けパーツが別売りで購入可能です。なお教育現場ではセットで配布されていたようです。
打ち心地はやや硬くしっかり目の感触があります。キーピッチは縦横18.5mm程度で違和感はありませんが、個人的な入力の快適度は並程度と言えるでしょう。
トラックパッドの操作性は最悪で、感度が悪くミスが多発します。調整しても改善されないので実使用は不可能に近いです。マウスが必須です。
端子とスピーカーとカメラ
インタフェースについては、左側にイヤホン端子とUSB-A、右側に電源、MicroHDMI、USB-A、Type-C端子が配置されており、さらに上部にMicroSDカードスロットがあります。
USB-Aは両側とも3.0対応で高速ですが、Type-CはPD充電非対応で、専用の電源ケーブルを使用しないと充電できません。この点はタブレットPCとしては致命的な問題です。
スピーカーはスタンドの後ろ側に2つ搭載されています。その配置はなぜこんな中途半端な位置なのかは謎ですが、一応スタンドを閉じていても音が抜けるように穴が開けられています。音質は意外とクリアで満足できるものです。低音は出ませんがタブレットでこの音なら充分かと思います。
カメラは前面と背面にそれぞれ1つずつカメラが搭載されています。前面のカメラは2MPのWEBカメラでオンライン会議などにも一応は利用可能ですが画質は正直最低レベルです。背面の5MPカメラは一般的な撮影用ですが、色合いも微妙で画質もあまり良くありません。
実際の起動時の挙動
実際にデバイスを起動して挙動を確認していきましょう。今回は一度完全に初期化した状態でソフトウェアをチェックします。
まず、デバイスに最初からインストールされているアプリについてですが、ほとんど何も入っていません。これは一般的なツーウェイ製品や中華PCではよくある光景で特に珍しいことではありません。マカフィーすらインストールされていません。
初期状態のディスクの空き容量は約200GBほどです。専用のリカバリ領域などもほぼないので想定よりも大きくスペースが利用可能です。
なお実使用では時々カクつきが目立ちます。ブラウジングや動画視聴においても快適とは言い難く、特にOffice利用などではストレスを感じるかと思います。
導入当時の格安タブレットPCとしてはコスパは悪くない製品でしたが、コイツを数年間も教育現場で使わされているってのは流石に生徒さんドンマイって感じです…。
ちなみに、動画再生時のCPU利用率やメモリ使用量は上記画像のような状況です。CPUはまだ余裕がありそうですがメモリは複数のタスクには厳しいです。
各種ベンチマーク
次はベンチマークで詳細な性能を見ていきましょう。まずはパスマークパフォーマンステストからの結果です。
結果を見ての通りかなり低い数値となっています。CPUのスコアは標準的なN4100よりも2割ほど低いです。この性能では教育現場や一般利用においてもかなり工夫が必要になります。ちなみに最近の2万円程度のミニPCに搭載されているN100のスコアは3倍近く出ます。
3Dグラフィックの性能もほとんど期待できない結果となっています。ストレージの性能はCPUやGPUよりはマシですが十分とは言えないでしょう。
cinebenchやサンドラの帯域テストの結果も予想通りの数値となりました。測定にはかなりの時間がかかりストレスが溜まりました。メモリはLPDDR4の2133MHzで動作していますが、思ったより結果数値は低めです。
次にクリスタルディスクマークで内蔵ストレージの速度を測定しました。結果はeMMCよりは速いものの、M.2のSSD搭載機種と比べると遅い部類です。ランダムリードライトはまだ使える範囲ではありますが速くはないです。
ゲームベンチの結果も見てみましょう。今回はドラゴンクエスト10を最低の設定で計測しましたが、さすがに厳しい結果となりました。ゲーム用途には不向きな数字と言えます。
実際、既にブラウジングなどでストレスを感じる結果となっているのでゲームがマトモにできる訳がないです。当然ながら最新版のマインクラフトなども全く動作しません。この性能ではゲームプレイは難しいです。
発熱と消費電力
発熱に関しては最高でも35度程度と、触れるレベルのヌルい温度です。比較的低発熱なモデルと言えるでしょう。内部温度も最高で約66度程度で比較的低めです。
消費電力は最高で11W程度と非常にエコです。一般的なノートPCと比べると圧倒的に低い数値です。また騒音に関してもゼロです。この機種はファンレスタイプのモデルなのでそもそも音が出ません。
バッテリー持ちに関してはYouTubeを流し続けて6時間ほど再生できました。本機は中古入手ですが、SSDの使用時間も370時間ほどだったので劣化も少ない状態だと思います。
本体の分解
次はデバイスを分解して内部をチェックしてみましょう。この機種はネジ止めではなく接着剤が使用されているため、慎重にヘラなどを使ってカバーをゆっくり外す必要があります。分解の難易度はかなり高く、実行する際は注意が必要です。
カバーを開けると、内部がこんな感じで確認できます。一見するとかなりスカスカです。まるごと空いている部分もあります。全体的な組み立て状態もやや雑でケーブルの固定も十分ではありません。コネクタの接続不良など不具合の発生もありえる状態です。
SSDは一般的な2280タイプがスロットに挿さっているので交換が可能です。一方メモリなどはメイン基板に直接取り付けられており交換は不可能です。
そして大部分を占めているのがバッテリーです。容量は26.6Whで見た目も少々怪しいです。例の教育現場での大量の不具合はこのバッテリーに起因している可能性が指摘されています。
学校などの高温環境での長時間使用を考えると、この手のチープなバッテリーの寿命は3~4年程度だと思うので、まぁ仕方ないかなとは思いますが…。そもそも中華メーカータブレットを教育環境で長期間使用するというのはナンセンスです。
総評など
ということで今回はUBOOKについてのレビューでした。2019年当時の中華タブレットとしては、私たちが遊ぶ分には興味深いデバイスでしたが、教育現場で大量導入されるには少々問題がある機種です。
補正予算案に端末の新規調達費を計上するという話もあり、結局追加費用が発生してしまう結果となっています。
まぁ現状の入札方式で条件に合ったPCを調達できる会社を選ぶというのはのは難しい問題ですし、メーカー指定は独占禁止法に違反する可能性もあるため、条件設定が難しいですが、これから専門家等がしっかり熟考する必要がある問題だと思います。
私自身法律や行政について詳しくないので、これ以上の記述は控えますが、やはり中華メーカーPC、というか格安タブレットを大量に教育現場向けに調達するのは様々な懸念があるな、というのがレビュー後の総評となります。
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