今回はジャンル『VR』ということにして映画の感想&VRの未来についての話です。普段、このブログでは映像作品の感想等は取り上げないのですが、VRということで特例として…。映画作品『レディプレイヤー1』のネタバレを含みますので注意です。
今回は映画公開初日にIMAXで見てきました。スティーブン・スピルバーグ(71歳)が表現するVR世界に圧巻です。発想が柔軟すぎるおじさんだよ…。
レディープレイヤー1の世界観:VR依存の近未来
レディープレイヤー1は2045年を舞台としたお話です。現実世界は荒廃の一途を辿り始めており、人類はVRの世界を中心に生きようとしている世界観。「寝る・食う・トイレ以外はVRでできる」と主人公も語るあたり、VRが生活の中心になっています。
借金が返せない人間は強制労働させられるのですが、この労働環境もVR世界でのこと。VR内のショップで買ったリアルアイテムはちゃんと現実に届く等、全てのシステムがVR世界と中心に回っています。全体が認知しているマトリックスのような世界。
街中の人がVRゴーグルを被っているし、室内のオバサンも家事途中にVRで戦っている。異様な光景ですがどこか近未来にワクワクするような表現に仕上がっているのがGOODです。
個人的にはかなり好きな世界設定です。自分が最先端のVR技術に触れている身であることもあり、VR世界全体の雰囲気をイメージしやすかった。
現代のVRプレイヤーでも理解できる装置で構成されている
この『VRに依存した世界観』をスピルバーグ(厳密に言うと原作ゲームウォーズの作者アーネスト・クライン)は完全な未来テクノロジーで表現しているわけではく、私達視聴者(特にPCVRゲーマー)が共感できるシステムで表現しているのがまた面白いのです。
目を覆う装置は現在のVR装置をスリムにしたような雰囲気。今の時代でも十分に実現できそうなシステムで再現されています。仮想空間を走るために使う装置は『Omni』や『KATWALK』のような現在でも販売されているシステムとほぼ同じ見た目です。これも非常に分かりやすい。
物体を認識、検知、操作するためのVRハンドグローブも『Hi5 VR GLOVE』のような現在でも入手できる装置の仕組みに近いもので表現されており、我々VRプレイヤーには『そう遠くない未来』として受け入れやすい世界観に仕上がっています。
一方、現実離れしている装置が登場しないわけでもなく、物語中盤で主人公が入手する『VRボディスーツ』などはVR世界で触れられたり、殴られたりする全身の感覚を完全にシミュレートできます。これはさすがに現代では再現不可能です。
更に、劇中で公共の路上にて人々がVRを楽しんでいるシーンがあるのですが、これも現実では再現が難しいシーン。バッテリーやケーブル等が一切なく完全にワイヤレスな環境なのです。家でプレイしているシーンより未来感が強い。
唯一現実離れしている”オンライン”の問題
作品全体の雰囲気としては『現代のVRプレイヤーの共感を得られやすい』作りになっていると思いますが、唯一今の時代で絶対に不可能なシステムが登場します。それが『オアシス』というオンラインVRシステム。この世界の舞台になっている仕組みそのものです。
この『オアシス』を舞台に主人公と仲間たちは交流を深め、世界の謎を解いていくというストーリーなのですが、このオンライン世界がまず実現不可能なんです。
現在のVRをはじめとしたハイグラフィックスシステムは、その膨大なデータを送り合うオンラインネットワークシステム構築が難しいため、オフラインでプレイすることがほとんどなのです。逆に言うとオフラインシステムでレディプレイヤーっぽい雰囲気を実現することは不可能では無いと思います。
現在の世界で配備されているインターネット環境、サーバシステムでは『オアシス』のような大規模マルチゲームを構築することはまず不可能です。データセンターの通信帯域は速攻パンクするし、サーバーへの書き込みも恐らく追いつきません。
それこそP2Pのような(厳密には全然違うけど)分散型データ管理システムでも作らない限りは世界全体のシステムデータ維持・更新が難しい。データ管理問題をクリアしても、インターネット環境の問題が残ります。
まず、現在のインターネット環境ではpingの問題があります。応答速度というヤツです。現在普通に配信されているゲームの海外サーバーにアクセスするだけでも遅延を感じるような世界なのに、VR空間で世界中の人間とシームレスに関わり会えるワケがありません。
その上にデータ通信速度の問題も加わりますので、結果的にかなりの遅延が発生するでしょう。劇中のようにリアルタイムで服装をプレゼントしたり、カーチェイス中にプレイヤーをコンマ1ミリのタイミングで救助したりすることは不可能です。
『オアシス』のような大規模マルチオンラインVRを実現するには現在のインターネット環境を丸っきり覆すような新たなネットワークシステムが必要です。個人のPC(ハードウェア)の問題よりもインフラの問題が大きいのです。
総評:機能を限定すれば十分実現可能な”夢”を与える作品
さて、オンラインの問題について散々言ってきましたが、ネットワークを限定し小規模ネットーワークゲームとしての『オアシス』ならそう遠くない未来に十分実現可能であると考えています。
具体的には、アミューズメント施設内に限定したオフラインネットワークであるとか、そのような仕組みであれば、記憶装置等、PCハードウェア類と入力デバイスが進歩した時点で実現できる世界です。
数百人規模のVRゲーム専用大規模アミューズメント施設などが運営されれば、この『レディプレイヤー1』のような世界観もある程度は再現できるでしょう。傍から見たプレイ光景は、まさに劇中の『IOI』のようなディストピア感満載になりそうですが…。
個人宅でのオンラインVR使用は、現在の『VRChat』や『virtualCast』『RecRoom』のようなシステムから大幅に進化を遂げることはここ10年では難しいでしょう。(グラフィックの向上はもちろんあると思いますが…)
全てを纏めると『オンライン』が課題になるということです。これが解決されれば、2045年には劇中のような仮想空間に依存した世界が待っているかもしれません。
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